■1. 読もうと思ったきっかけ
- 御用聞き型のSIがAIでコモディティ化していく感覚が現場にあり、その先に何が残るのかを言語化したかった。
■2. 印象に残った内容
読み終えて一番大きかったのは、本の内容そのものより「自分が無自覚にやっていたことに名前がついた」ことだった。以下は読後の壁打ちで整理した内容。
PoCの「完成度」には2軸ある。 過去に「全力でPoCを作れば食いつく人はいる」という実感を持っていたが、本には「PoCは完成度がゴールではない」とある。一見矛盾するが、分解すると軸が違うだけだった。縦=どこまで作り込んだか、横=相手の欲求に当たったか。本が否定しているのは縦、自分の実感は横の話だった。実際に食いついてもらえた案件も、全部を作り込んだのではなく「一部できていた」ものに注目してもらっている。効いたのは的中であって作り込みではない。
「自分だったらこう使う」型は、たまたまではなく手法だった。 生成AIでエクステリアのデザインを出す仕組みに、「自分なら最後に手でいじりたい」と思って手動微調整の機能を入れたら、そこがヒットした。これを長らく偶然だと思っていたが、やっていることは自分を一人目のユーザーとして使うという再現可能な型だった。しかもこの時、自分がエクステリアの素人だったことがむしろ武器になっている。素人だから「AIの出力をそのまま受け入れるのは怖い」という一般ユーザーの感覚を持てた。
自分の型は「憑依 → 自分だったら」だった。 情報収集の段階では顧客に憑依し、では何を作るかという段になると「自分だったら」に切り替わる。これは本にあるFDEの「具体に寄り添いつつ、抽象に引き上げ、未来に向けて投げ返す」とほぼ同じ動きで、本を読む前から実践していたことになる。
ただし真ん中の「抽象化」が抜けていた。 憑依(具体)からいきなり実装(具体)へジャンプしていて、間に「なぜそれが刺さるのか」を抽出する工程がない。抽象化していない当たりは、再現できない当たりになる。 当たった理由を言語化していないから、次も当たる気がしない。「たまたま」と感じていた正体はこれだった。
試しに後追いで抽象化してみたら、機能案が3倍になった。 手動微調整が刺さった理由を「人はAIの出力を丸呑みしたくない。自分の手が1割入るだけで、それは自分の作品になる」と定義し直してから発想すると、①最初にテーマを与えて生成させる(前に手を入れる)、②ゾーンを指定して部分的に作り直す(途中で手を入れる)、③元の手動微調整(後で手を入れる)——と、介入タイミングで綺麗に3案が並んだ。1個の当たりが3個になる。これがP.81の言う「定義した本質をアクションにする」の実感だった。
しばらくは「憑依 → 抽象化 → 自分だったら」を意識的に回してみる。
■3. 気になった一文
P.11)思考のOSを転換する。「メタ化」。抽象 → 具体。川の構造 > 魚の釣り方 > 魚
- 構造を考える。仕事の取り方を教わるより、実践して試行錯誤したほうが身についた。全力でPoCを作れば食いつく人はいる。
P.49)レーザーポインタ=狭いが刺さる ≒ 具体 / 懐中電灯=広いが曖昧 ≒ 抽象
- 話し合うにしても、この視点を合わせないと議論にならない。
P.55)多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分たちが何を欲しがっているのか分からないものだ。(スティーブ・ジョブズ)
- 良い悪いはその場で言えても、何がどう良いのか、どんなものが欲しいのかはパッと出てこない。
P.79)FDEが単なる御用聞きに終わらないのは、彼らの仕事が定義上未来側に立つことを要求されているからです。具体に寄り添いつつ、抽象に引き上げ、未来に向けて投げ返す。
- 自分の「憑依 → 自分だったら」と同じ構造。ただし自分には真ん中が無い。
P.93)目的は使い手視点で決まる。バッテリー駆動時間ではなく、バッテリーを持ち歩かなくて済むこと。
- 目から鱗だった。同じ意味でも表現によって捉え方が全然変わる。
P.128)抽象化したりコンセプトをまとめたりという上向きの収束型の仕事においては、仕事の品質は多くの人が関われば関わるほど下がっていきます。究極的には一人がやるのがベスト。
- 著名な建築家は一人でデザインを考え、作る時は大人数で工事する。この話は非常によくわかる。
P.146)川上では足りないところに目を向けるのではなく、少ないデータや情報から何ができるかという仮説を数多く打たせていく姿勢が求められる。
- 答えを1つ出すのではなく、可能性がある限り案をいっぱい出す。
P.196)本来PoCは、まずやってみて次の意思決定に必要な知見を得るための手段。成果物の完成度がゴールではない。
- 事前に「これを学ぶ」を定義し、意思疎通しておくことが大事。
P.222)その実態は、抽象度の高い構造的議論を目の前の具体的制約に引きずり下ろすことで思考を停止させる、典型的な川下のOSの反応にほかなりません。
- どの視点から話すのか、目線合わせが必要。
P.261)これまでの御用聞き型のSIのOSを使い続ける限り、その価値はAIによって急速にコモディティ化され、やがて限りなくゼロへと収束していくでしょう。
- 求められるのは、抽象化し、問題を発見し、構造設計し、それを形にすること。まさにFDE的。
P.263)もし顧客が自分のニーズを最初から明確に言語化できるのであれば、その時点でAIがかなりの部分を解決してしまう時代がすぐそこまで来ている。逆に言えば、曖昧である状況こそ人間の出番。
- 感情に寄り添うのも人間にしかできない。具体化 + 感情に寄り添う、がAIとの差別化になりそう。
P.264)そもそも何を目指すべきなのか、本当に解くべき問題なのかを考える力こそが川上への入り口。
- 作業に逃げないのが大事。
■4. 知らなかった言葉
- アナロジー(P.188)… 類推。具体的な見た目は似ていないが、抽象的な構造に類似点がないかを考える思考法。
- 付和雷同(P.238付近)… 自分の意見がなく、他人の意見に軽々しく同調すること。